
2024.06.24. 公正経済 — 拡張現実(XR)スタジオを構築し、既存の構築済みシステムと連動する公共事業で、規格を満たさない「規格外製品」が提案・納品されたとの疑いが浮上している。入札過程で規格外製品が提案されたかどうかを確認すべきだとの意見が出ていたが、発注機関はこれを黙殺したことが明らかになった。また、当該機関は、事業を受注した企業の経営上・営業上の秘密を侵害する恐れがあるとして、関連資料の公開を一切拒否した。
江陵科学産業振興院(理事長・金洪奎(キム・ホンギュ)江陵市長、院長・キム・ナムス)が昨年10月に公告し推進した「メタバースハブXR VP(バーチャルプロダクション)スタジオ構築および高度化用役(調達庁ナラジャンター入札公告番号20231000236)」事業で、このような混乱が最近表面化した。
既存システムとの連携性確認のため「交渉契約」を採用
振興院は▲インカメラVFX(ICVFX)およびMICE産業支援のためのLED基盤XRバーチャルスタジオLEDメディアウォール構築およびスタジオ装備納品設置▲既構築の東北圏メタバースハブシステムとの連携最適化などのため、約9億7000万ウォン(約1億1000万円)規模の予算を編成し、同事業を発注した。
事業は地方自治体を当事者とする契約に関する法律(地方契約法)に基づく「交渉による契約(交渉契約)」方式で進められた。
この方式は、契約履行の専門性、技術性、創造性、緊急性、安全性などが求められる場合に採用されるもので、提案書評価委員が入札参加企業から提出された提案書を定性的な側面から評価するのが特徴である。
評価委員会の定性評価点数(最高70点)と事業担当者の定量評価点数(最高20点)を合わせた「技術評価点数(最高90点)」を、入札参加企業が提出した入札価格を評価した「価格評価点数(最高10点)」と合算し、最も高い点数を得た業者を優先交渉対象者に選定する。
発注機関は優先交渉対象者と交渉を進め、交渉完了時には事業遂行契約を締結する。もし交渉が決裂した場合、発注機関が次順位交渉適格者と交渉を進める構造だ。
交渉契約方式は、提案書評価の配点が最も大きいため、ここで勝敗が分かれることが多い。事業目的の達成に不十分な規格未達製品が提案された場合は、通常、提案書評価の段階でふるい落とされる。
しかし、同事業では特定企業が規格外製品を提案したにもかかわらず、提案書評価段階で高い評価点数を受け、事業まで受注したという疑いが浮上し、議論を呼んでいる。
「先行事業で構築されたシステムとの連動」に重点
同事業の提案要請書(RFP)を見ると、振興院が先行事業で構築されたシステムとの連動を重要事項として提示していることが分かる。後行事業の成果物が既構築システムと適切に連動しない場合、XRインフラを統合運用・制御することが難しいためだ。

振興院はRFPの機器別詳細仕様書を通じて、メタバースハブインフラ連携高度化のための「メディアサーバー(Media Server)」は、LEDウォールや既存のカメラトラッキングシステムと連動しXRコンテンツ制作を支援できるよう、▲Unreal Engineネイティブ基盤で全てのバーチャルスタジオおよび拡張現実グラフィック要素を同一の設計ソフトウェアで設計▲Unreal Engineに「GPU Direct for Video」実装可能▲ビデオウォールを活用してバーチャルスタジオを拡張・生成可能などの規格を提示した。
振興院が先に構築し運営中のシステムでUnreal Engineで動作する3Dコンテンツが制作されているだけに、同事業も既構築システムとの円滑な連動のためにUnreal Engine基盤であることを要求したものと分析される。
「4チャンネルレコーダー&プレーヤー(4Ch Recoder & Player)」は、LED基盤XRコンテンツおよびMICE中継のためのソース映像およびPGM映像を録画・再生できるよう、▲MXFなど多様な拡張子の入出力対応▲多様な物理インターフェースの入出力対応▲オーディオミキシング、16チャンネル音声処理対応▲既構築のオールインワン制作サーバーおよびMAM、中継サーバーとの連携運用対応などの規格を提示した。
メタバースハブXR VPスタジオ構築のための「LEDボリュームシステム(Volume System)」のLEDスクリーン規格としては、▲LEDタイプSMD(4 in 1)▲輝度1500cd/㎡▲画面リフレッシュレート7680Hz以上▲解像度4224 x 1728ピクセル以上▲視野角(H/V)160°/140°▲LEDピクセルピッチ2.6mm以下▲電磁波適合認証(KC認証)製品などを要求した。
このような規格を調達庁ナラジャンターに事前公開した当時、規格を修正すべきだとの意見は出なかったことが確認された。映像メディアインフラ製造企業の関係者は「提案要請書の事前公開手続きでは、▲特許など過度な技術を要求する規格や▲特定製品にのみ有利な規格など、いわゆる『特定規格』を修正するよう意見が提示されるのが通常だ。同事業の事前公開段階で特に修正意見がなかったということは、規格自体には問題がないと業界が判断した証拠だ」と述べた。
科学技術情報通信部の告示である「公共機関の放送装備構築・運営指針」によると、需要機関は事前公開の結果、事業者などから意見があった場合、放送装備構築事業ごとに提案要請書の草案、事業参加希望者の意見などを反映して提案要請書を確定する機能を果たす「提案要請書審議委員会」を構成・運営しなければならない。ただし、事前公開の結果、事業者などの意見を需要機関が受け入れ、提案要請書に反映した場合には、提案要請書審議委員会の構成・運営を省略できる。
情報提供者ら「規格外製品が続々と提案された」
ところが、同事業の提案書評価当時、特定企業が規格外製品を提案したという疑いが最近具体的に浮上した。
提案書評価にはT社とD社の2社が参加したが、T社の提案書に含まれた提案製品がRFPの要求規格を満たしていなかったというのが疑いの主な内容だ。
情報提供者らは「国内XR産業市場の規模が小さいため、業界ではどの事業に誰が参加し、彼らがどのような製品を提案し、結局どの製品が納品されたかがほぼリアルタイムで共有されている。ところが、同事業は容易に理解しがたい過程で進められたという話が絶えない」と共通して述べた。
まず、T社が提案書評価当時、Unreal Engineをサポートできないメディアサーバーを提案したという疑いだ。
多くの情報提供者は「先行事業で構築され運営中のシステムがUnreal Engine基盤で3Dコンテンツを制作しているだけに、RFPでもこの点を根拠にメディアサーバーがUnreal Engineネイティブで動作することを要求した」とし「しかしT社が提案書評価当時提案した製品はUnreal Engineをサポートできない製品だという話が業界で出ている」と述べた。
複数のXR構築公共事業で提案書評価委員として参加した専門家は通話で「同事業の提案書評価委員会を構成した評価委員のうち数人はXR専門家ではないと聞いている。したがって、彼らがT社がどのような製品を提案したかを即座に判断し評価するのは難しかっただろう。他の公共事業で専門家で評価委員が構成できない場合、評価委員会構成手続きをやり直すこともあるが、同事業ではそうしたことはなかった」と述べた。
T社が提案した4チャンネルレコーダー&プレーヤーが規格を満たさない製品だという疑いも続いた。
これに対し、映像機器インフラ設計専門家は「業界で流れている話によると、T社が提案した製品はMXF拡張子などへの録画機能がない。そのような製品をレコーダーとして提案したのであれば、提案書評価当時不合格点をつけられていたはずだ」と意見を述べた。
MXFはオーディオ、ビデオ、メタデータをすべて含むことができる業界標準規格で、撮影、編集、転送のためにプロフェッショナルビデオ制作で使用されるコンテナ形式だ。ソニー、キヤノン、パナソニックなど多様なプロフェッショナルカメラでのレコーディングに使われており、放送送出、テープレスアーカイビング、ポストプロダクションなどでも採用されている。
このほか、「他の公共事業でこのようなレベルの規格未達製品提案が行われた場合、該当製品を提案した企業に著しく低い点数をつける『不合格処理』をしたり、そもそも提案書評価をやり直すこともある」という意見が出た。
T社が提案したLEDスクリーン製品についても疑惑が提起された。
RFPでは、LEDスクリーンが赤・緑・青・白(Red, Green, Blue, White)の4色を表現できるSMD製の4 in 1 LEDパッケージタイプの製品であることと、製品運用時の電磁波安全性を確認できるようKC認証製品であることなどを求めた。4 in 1 SMD製品は耐久性が高く、XRスタジオに適しているとされている。
一方、情報提供者らは、T社が赤・緑・青(Red, Green, Blue)で構成された3 in 1 SMD方式のLEDタイプ製品を提案したと疑惑を提起した。さらに、当該製品は提案書評価当時、KC認証を取得していない製品だったとも説明した。
「規格未達製品かどうかの確認要請、振興院が拒否」
同事業に関する疑いは、提案書評価当時から出始めた。
評価に参加した評価委員の間で、提案製品の規格適合性を確認する必要があるという意見が出されていたのである。
公正経済が入手した評価委員らの提案書評価資料によると、ある評価委員はT社に対する評価を進めながら「既存システム(メディアサーバー)との連動検証が必要だ」という評価意見を振興院に提示した。
提案書評価でこうした意見が示された場合、発注機関にはこれを検証する責任があるというのが業界の見方だ。
しかし、発注機関である振興院はT社と事業遂行契約を締結するまで別途検証を行わなかったことが分かった。これを巡り、業界では「振興院が契約締結のため前だけを見て『突撃』した」との評価が出た。
さらに、提案書評価後も提案機器の仕様を確認してほしいという要請が振興院に伝えられたが、振興院はこのような要請に対して「提案書公開不可」を理由に拒否したことが確認された。
これは規格外製品提案事実確認要求を情報公開請求と誤って理解し拒絶したものだ。情報提供者らは、振興院が要求内容をわざと誤って理解したふりをして要求を黙殺したと見ている。
情報提供者らと業界専門家らは「振興院が契約締結前に提案製品の規格適合の有無を確認し、その結果疑いが事実と明らかになった場合、提案書評価を再実施するか、次順位者と交渉を開始すべきだった」と指摘した。
振興院はこうした疑惑について全面的に否定した。
振興院の事業担当者は、「入札参加企業は同等以上の製品と規格で事業遂行及び規格書を満たすソリューションを提案した。公開募集と抽選によって構成された評価委員らが適合と評価したソリューションだ」と答えた。
しかし、振興院は同事業で提案書評価時にどのような製品が提案されたか情報公開を求める公正経済の要求に対し、「公共機関の情報公開に関する法律第9条第1項第7号により提案社が非公開を要求した」という理由を挙げて拒否した。
同条項によると、「法人・団体または個人(法人等)の経営上・営業上の秘密に関する事項であって、公開された場合法人等の正当な利益を著しく害する恐れがあると認められる情報」は非公開にできる。
製品をいくらで納品するかが分かる提案価格を非公開にし、提案製品のモデルを教えてほしいという要求だったが、振興院はどの製品が提案されたかが公開されれば、それ自体で企業の経営上・営業上の秘密を侵害することになると判断したようだ。
情報提供者らは「振興院が提案書評価当時どのような製品が提案されたかを公開しない理由は明白だ。規格外製品が提案されたのが事実で、これを公開すれば振興院が規格外製品提案社と契約締結を無理に推進した過ちが明らかになるからだ。振興院は今からでも事業関連情報を透明に公開すべきだ」と述べた。
一方、江陵市議会で振興院に対する行政事務監査が最近行われており、市議会は振興院に同事業関連情報の提出を要求したことが分かった。
[反論報道] <[単独]江陵科学産業振興院、「規格未達製品提案」疑惑にも契約まで「突撃」>記事関連
本紙は去る6月24日付で<[独自]江陵科学産業振興院、「規格未達製品提案」疑惑も契約まで「突撃」>という見出しで、江陵科学産業振興院(振興院)が昨年10月に公告、推進した「メタバースハブXR VPスタジオ構築及び高度化業務」事業において、規格未達製品が提案されたにもかかわらず、振興院の提案書評価段階で高い評価点数を得て、契約まで進められたと報道しました。
これについて振興院は、「同事業で落札したT社が提案した製品は、提案書発表評価の当時から互換性や最新バージョン、数量に至るまで規格以上の製品を提案した」としたうえで、「提案書評価委員はXR専門家を含む放送通信技術分野の専門家で構成されており、規格未達に関する意見を示した評価委員はいなかった」と明らかにしてきました。
また、振興院は「記者が要求した情報について、各企業から公開同意を得た範囲内で最大限協力した」と伝えてきました。
この報道は言論仲裁委員会の調停によるものです。

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